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このエントリーを含むはてなブックマーク 2007.07.03    ビリーズブートキャンプ物語7日目

1日目から読む

最終日。



卒業するか、ここに留まるか。結局、結論が出ないでいた。



正確には、昨日のブリジェットの話を聞いて、それどころじゃなくなった。

というのが本音だった。



訓練の時間は迫ってくる。



オレは、結論を出すのを諦め、最後の訓練に集中することにした。

ビリーのことだ。ちょっとくらい結論が遅れても許してくれるだろう。



最終日は、屋外での訓練だった。

みんなでお揃いのブートキャンプTシャツを着る。

しかも、今日はいつもより隊員が多い。倍はいそうだ。

知った顔もいれば、初めて見る顔もある。



今日は最終プログラム。

ビリーのテンションも隊員のテンションも初っ端から上がりっぱなしだ。

最終プログラムは、今までの動きの復習だと聞いていたが、

初めてやる動きが結構多くて、少し戸惑った。

でも、楽しい。

ビリーバンドも久しぶりに使った。



このまま、もう少しだけ、こうしていたい。

そんな願いも空しく、あっという間の30分が過ぎ去った。



ビリーは、最後に相応しい言葉を並べている。



しかし、オレの頭にはあまり入ってこなかった。

これからのことで頭が一杯だった。



訓練が終わった後も隊員達はその場を動こうとはしなかった。

この充実感を味わっているんだろう。

最後の別れを惜しんでいる隊員もいるかもしれない。



オレは、そんな隊員達をよそに、意を決っして彼女の姿を探した。

しかし、既に施設内に戻ったらしく、見つからない。

オレは、彼女を追って、施設内へと入っていった。



少し大きめのドアをノックする。



返事は無い。



女性の部屋に勝手に入るのは忍び無いが、オレには時間が無い。

扉を引いた。鍵はかかってない。

心の中で謝罪しながら、中に入る。



質素な部屋だった。

生活に最低限の物しか置いてない。

トレーニングの本だけが雑に重ねられている。

シンプルな机の上に写真立てが三つ。

家族の写真だろう。笑顔から幸せが溢れ出している。



シャーッ



奥のシャワー室からカーテンを開く音がした。

オレは、写真立てを置き、彼女が出てくるのを待つ。



部屋に入って来た彼女は、シャツにパンツという男らしい姿だった。



「!!」



一瞬、オレの姿を見て、驚いた表情をしたが、すぐにいつもの調子に戻り、

ソファに座ると、ボディケアを始めた。



「何かようかしら?」



鋭い視線でこちらを射貫くと、足にクリームを塗りながらシェリーは尋ねた。

「あなたに話があって」オレは、少し緊張しながらそう答えた。

「わたしにはないわ」

かぶせ気味に返事が返ってきた。

部屋に充満する重たい空気に涙目になるが、ここで諦めるわけにはいかない。



「なぜ、そんなに嫌うんだろう?」



尋ねるつもりが緊張して独り言になってしまった。

もちろん、シェリーは答えない。マッサージを続けている。



ビリー、ちょびっとでいいから、オラに力を貸しておくれ。。。



「なぜ、あんたはそんなにオレを嫌う?」



シェリーは依然無視を続けるようだ。



「初めは、オレだけが嫌われているのかと思った。

 何が気に食わないのかは知らないけどね。

 本能的に嫌いな奴はオレだっている。そんな類のことだと思ってた」



勝手に話を続ける。



「でも、実際は少し違った。あんたは日本人。いや、アジア系の人間を全部嫌ってる。

 ・・・違うかい?」



そこまで聞くとシェリーは急に立ち上がった。

ビビって距離をあける。が、彼女は床でストレッチを始めた。

オレはその距離を保ちつつ話を続ける。



「今、ブートキャンプには日本人がたくさん入隊している。

 ビリーの偉大さは、日本でも評価され始めた。

 でも、あんたは日本の新兵達を片っ端から過酷な隊に勝手に押し込んで、

 一見、除隊させようとしているようにも見える。なぜだ?」



「気に食わないからよ」



初めてシェリーが答えた。



「なぜ?・・・気に食わない?」



シェリーはまただんまりを決め込んだ。



「確かに、日本人はミーハーな民族だ。

 ビリーの素晴らしさを本当にわかろうとしているかは疑問だし、

 少しでも辛いと思ったらすぐに諦める。効果が出ないと不満を言う。

 中には、陰口や悪口だって言う奴もいる。それは悲しいけど本当だ。

 でも、中にはビリーの精神を感じ取る人間だっている。それも事実だ。

 なのに、あんたのやってることは、

 その軽蔑してる日本人達とちっとも変わらないんじゃないのか?



 いいか、あんたのやってることは、ビリーブランクス、

 つまりは、あんたの父親を侮辱してることになるんじゃないのか?」



シェリーは、いつの間にかストレッチを止め貧乏ゆすりをしていた。

そして、オレの顔を睨み付けている。

少しは心に響いたようだが、このままじゃ彼女を怒らせただけで終わりだ。



いちかばちか・・・。



オレは最後の賭けに出ることにした。



「シェリー、あなたの父親はアジア系の人だったんだね」



シェリーの貧乏ゆすりが止まった。



つづく

この記事は、 2 オモロ


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