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このエントリーを含むはてなブックマーク 2007.08.13    旅の終わりは琵琶湖の畔

名古屋〜神戸チャリ旅行一話目から読む

前日、鈴鹿峠を見事制覇したバカ社長。

この後は、勇んで京都に乗りこんで一気に神戸を目指します。



滋賀県草津市。



ネカフェで目覚める。時計は4時。

出発するはずが、疲れのため6時前の時間いっぱいまで休むことに。

時間になり、顔を洗って、ドリンクコーナーにあった、伊藤園の野菜ジュースを

六種類全部飲み干して、ネカフェを出る。



さぁ、この涼しい時間に進めるだけ進むぜ。いくぜー!

愛車にまたがり、いざ出発。



   ズルズル・・・

が、変な音がして動かない。

調べてみると、後輪がパンク



慄く、バカ社長。

この時間じゃ、どうすることもできず。

修理道具なんかも持っちゃいない。

もし、店が開くまで待ったとしても、

こんなところじゃ自転車屋さんが見つかるかもわからない。



どうすることもできず。



思い出したかのように疲労が身体を覆っていく。



すぐ近くには、南草津の駅。

JRは既に動き始めていた。



帰るか・・・。



また、来ればいいさ。



そう思って、自転車を押して、駅の方へ。



駐輪場を探す。

見つからない。見つけても有料ばかり。

そんなとこには預けられない。

どうしよう。。。



その時、オレの頭の中で悪魔が囁く。



(そのまま置いちゃえばいーじゃん)

(きっと、パンク直してもまたすぐ他のとこが壊れるぜ)

(だいたい、そいつ買ってもう10年じゃねーか。もう寿命だよ、寿命!)



そ、そうか。寿命か。で、でも・・・。



オレの心が揺れ動いていた時、



「ワタシ、いいですよ」

彼女は言ったんだ。



「ワタシを、ここに置いていってください」



え・・・。



「ご主人様と一緒に色んなとこ行きましたよね〜。

 神戸から大分とか、あ、私は、倉敷でお留守番してましたけど。

 他にも、横浜でも色んなとこい行ったし、

 それから、箱根!寒かったですよね〜。

 静岡も!富士山綺麗だったし、名古屋は道広かったですよね〜」



お前、何言って・・・。



「こんな一万円くらいの安物の自転車でこんなに長い間、こんなに長い距離

 走ったのって、きっと珍しいですよね〜。

 本当に、ワタシ、ご主人様には感謝でいっぱいなんです」



彼女は、勝手に続けたんだ。



「でも、ワタシ、もうボロだし、変な音しっぱなしだし、サドル硬いし、

 ハンドルも曲がってるし、今度もパンクしたし、自分でももう無理なのはわかってるんです。

 だから、このままじゃ、きっとまたご主人様に迷惑かけちゃうから。

 そんなの、自転車として失格だから。だから、、、今までありがとうございました」



全部彼女のせいにしようとしてたんだ。



でも、彼女は、そんなオレに「ありがとう」って言ったんだ。



・・・・・・。



突然方向を変えると、今来た道を戻る。



「ちょっと、どこに行くんですか!どんどん駅から離れてますよ!」



「進むんだよ!」

「進むってどうやって!」

「押してく!」

「そ、そんなの無理ですよ!どれだけ時間かかると思ってるんですか!」



「お前はどうなんだよ!お前はどれだけオレのこと待ってたんだよ!!

 倉敷で置いてかれて、横浜で置いてかれて、名古屋で置いてかれて。

 めちゃくちゃ待ってたじゃねーか!

 それに比べたら全然短いわ!」



「で、でも!!でも・・・」



「今までずっと不満一つこぼさず、オレを乗せててくれてたんだ。

 だから、今度は、オレの番だ。それに・・・」



(それに、もう誰かを失うのは嫌なんだよ)



熱い会話を脳内で交わし、結局、自転車を押して、本気で京都を目指すことに。

標識

が、しかし、元々荷物を軽量化する意味もあり、バカ社長はサンダル。

そんな状態で、30分も歩くと、足には多数の水ぶくれ。

歩みを進めるたびに痛みが走ります。

平坦な道を目の前にして、進むスピードは激遅。

ストレスが溜まりますが、ただ一歩一歩進むのみ。



ここから、歩いて神戸まで行く気もさらさらなく、

途中で偶然にも自転車屋に遭遇するか、

ホームセンターでもあれば、そこで空気入れを買って、騙し騙し進むか。



しかし、時間はまだ6時を回ったところなので、今は歩いて進むしかありません。

最悪、このまま歩いて京都まで行ければなんとなかなる。

その思いで、ただひたすら歩き続けます。



7時30分

琵琶湖

ようやく、琵琶湖を通過。

湖面には、学生が操るカヌーが。そんな、のどかな景色が広がる中。



し、死ぬ・・・。



抜け殻になった男がひとり。

しかし、休憩すると逆に痛くなるので、あまり休憩をいれずに進みます。



途中、ホームセンターや自転車屋の看板などを探しながら進むのですが、

そんなの見つかりゃしねえ。

名古屋で見つけたのは、物凄いラッキーだったに違いない。

そんなことを考えると前の方に、ドンキホーテの黄色い看板が。

うおー!!ドンキホーテなら空気入れは売ってるやろー!

どこや!どこにあんのやー!!

興奮して近づくと、



キンキホームの看板やんけー!!



最初と最後の一文字が微妙に見えなかったための勘違い。

疲労度はさらにアップ。



8時半

日差しも強くなって、かなりフラフラな状態。そんな中、

画面中央奥

遠くに、『自転車』と書かれた看板が。



もう、オレは騙されんぞー!

お前らの手の内はわかっとんじゃー!

これで、期待させといて、いざ着いたら、

「自転車好きが認めたラーメン」

とか、物凄い角度でオレを騙す気やろー!!



いざ、近づくと、

自転車屋なのか・・・

普通に、自転車屋のようだ。

空気入れたい

空気入れも無料だし、良心的。



こ、ここならこいつを任せられるかもしれん・・・。



だが、どこにも開店時間が書いてない。

早くて9時。普通で10時。遅くて11時。

最悪だと、休日

土曜日だから、やってると思うが、お盆休みというのも考えられる。

しかし、足の状態を考えるとここに賭けるしかない。



最悪11時まで待つことにして、店の日陰で座り込む。

足が痛すぎるので、サンダルを脱ごうとするが、

できた水ぶくれが破れて、サンダルが足にへばり付いている。

痛みに耐えて、ベリっと剥がすと、黒いし汚いし、なんか色々凄い。



さらに、もう一箇所、自転車を漕いでる時から、擦れて痛かった左足の小指も見てみると、

皮がベローンってなって、赤い肉が見えてるんですけど・・・。



見なきゃ、良かった。。。

皮を元に戻そうとしても、激痛なので、もう見なかったことにする。



9時。

トラックの音で目が覚める。

いつの間にか携帯を握り締めて眠っていた模様。

店の駐車場にトラックが入って来た。

そして、しばらくすると運転手がやってきた。

「店の人ですか?」

と聞くと、「運送業者です!あれ?お宅、お客さんですか?」

どうやら違うみたい。

何時に開くか知ってるか聞いてみたが、知らなかった。



再び、座り込んで待つことに。



9時半。

シャッターの音で目が覚める。

また、いつのまにか眠っていた模様。

音の方を見ると、メガネのおっちゃんがシャッターの鍵を開けているようだった。



「店の方ですか?」

たずねてみると、

「そうですよ?どうしました?」

そこで、パンクしたことを伝えると、

「なるほどなるほど。でも、うち10時からなんで、もう少しお待ち頂いてもいいですか?」

「いつまででも待ちます!!」

明らかに不審者な格好のオレにもジェントルな対応に感謝しつつ、待つ。

それからバイトの店員が5人ほどやって来たが、

全員が、かっちょいいチャリで通勤してきた。やっぱりそんなもんなのか?



10時。

音楽が流れ出し、シャッターが開く。

「お待たせしましたー」

店員が笑顔で迎えてくれる。

自転車屋に開店前1時間半から待ってる奴なんているんだろーか?

なんて、考えてるとさっきのメガネの人が出てきて、

「お待たせしました。工具中にあるんで、どうぞー」

愛車を店の中に運び入れる。



そして、手馴れた感じで、

後輪の空気を一度抜いチューブを取り出してからもう一度膨らまし、

水の中に沈めてパンクの箇所を探していく。



10分ほどで修理終了。

「穴は開いてませんでした。虫ゴムが劣化して空気が抜けたみたいですね。

 前輪のも買えておきましたんで」



こ、これで再び走ることができるのか・・・。

思わず涙しそうになっていると、

「今なら、400円で全体的にメンテナンスしますけど、いかがですか?」

そんな値段でしてくれるんなら、いくらでもしてください!

二つ返事でOKする。が、

「でも、この自転車、買ってから随分経つし、車に轢かれたりして、

 だいぶガタがきてると思うんですけど、どうなんですかね?」

一瞬でも捨てようと思ったこいつが、どんなもんなのか専門家に聞いてみたくなった。



「確かに、そうですね。随分痛んでますね〜」

やっぱりそうなのか。こいつはまたいつ壊れるかわからないのか・・・。

なんとなく、悲しくなった。しかし、そこで店員は、



「でも、できるだけ長く乗ってあげたいですから」



その言葉を聞いて思った。



この人プロや!プロの自転車屋さんやー!!



横浜に住んでたときに、ブレーキから変な音がするから持っていったら、

ドライバーでチョイチョイってやっただけで、「800円」請求して、

しかも、ブレーキの音が全く直らんかった、やる気のないオヤジとは大違いだ。



そして、プロは、テキパキと愛車を直していく、

修理中

箱根でヤン車に轢かれた時に、曲がったハンドル。

箱根で鉄柱にぶつかった時に、曲がったブレーキ。

箱根でこけた時に、おかしくなった後輪のブレーキ。



15分後。

画面中央奥

「ご主人様、ワタシ、どうですか?」



「・・・・・・。」



「あ、やっぱりそんなに変わらないですよね。

 お店の人にも、ギアチェンジの部分が曲がってるし、

 左のペダルも曲がってるって。

 ダメですよね、こんなワタシ・・・。

 エヘヘ、ごめんなさい。また走れると思ったら、つい嬉しくなっちゃって・・・」



「綺麗だ」



「え・・・?」



「今まで見た中で、一番綺麗だ」



「や、やだ〜!からかわないでくださいっ」



プロに感謝の言葉を述べて店を後にする。



「さぁ、帰ろうか。神戸に」

「ハイ!」



二人の旅は、まだつづく



プロがいる店
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